税理士は知らない

 経営者にとって税理士はいざという時に知恵を出して助けてくれる存在だと思っている。しかーし。税理士は全能の神ではない。税理士の本来の業務つまり国から資格を与えられたのは、国の代わりに税務申告業務をするからだ。国が「資格を与えるから、国の代わりにちゃんと目を光らせるんだよ。脱税を手伝ったりしたらいけないよ」と言って税理士の資格を与えているわけ。

 だから、税理士は経営は知らないし、資金ショートの危機に対してアドバイスできないし、銀行融資を引っ張ってくることにも興味がない。自分の本業をやって顧問料をもらえればそれでいいというのが税理士のスタンス

 経営者が資金繰りで死ぬ思いをしているのに、その隣で涼しい顔をしているのが税理士。「それは税理士の仕事ではない」と頭から思っている。いざという時に頼れない。でも、税理士はそういうものなんだよね。仕方ないというか、勝手に期待してはいけない。

 ごくまれに資金繰りをやる税理士がいるけど、資金繰りを最もよく知っているのは銀行員で法人営業をしていて融資経験豊富な人。だって銀行内部のことを知っているんだから

 というわけで、資金繰りコンサルは銀行経験者かスタッフにそういう人がいる組織がいい。税理士を頼るのは完全にお門違い。

 私の知人の社長は資金ショートで死にかけた。税理士は「このままではお金が回らなくなるなー」と分かっていたのに何も言わなかった。で、社長が追い詰められてから「こうなると分かってましたよ」だって。社長は「あんた顧問料を毎月5万円も取っておきながら、毎月来るのはスタッフで、あんた自身は何もせず、何じゃその無責任発言は」と激怒しそうになった。

 だから資金繰りのアドバイスをしてくれる人は別に顧問に置くこと。いいアドバイザーを知っているので、そのうちここに紹介しよう。

決算書の読み方の本

 決算書を読む必要がある人はたいてい本を買う。決算書の読み方の本が近年たくさん出版されているのは、それだけ関心が高まっているからだし、需要があるからだろう。『週刊ダイヤモンド』や『週刊東洋経済』などの経済誌も決算書の読み方を特集することが多い。定期的に特集しているようで、それは売れるからだろう。

 しかし、問題もある。本や雑誌はどうしても総花的にならざるを得ない。守備範囲が広くなるわけだ。自分には全く必要のない話を読むのは教養読書で、経営者は自社に必要な要所を押さえればいいから実用読書で十分なのだ。

 経営者は忙しい。重要点はピンポイントで押さえたい。だから本や雑誌は帯に短したすきに長しなのである。

 もう1つ本や雑誌で残念なのは、取り上げる事例が大企業なのだ。大企業と中小零細企業の決算は全く異なる。数字の桁が違うという話ではないのだ。大企業なら基本的に銀行融資を受けられないということはない。一方、中小零細企業は常に銀行融資を得られるよう意識しておく必要がある。この差が決算書の違いになるわけ。

 中小零細企業の社長が経営を勉強するために本や雑誌を買って読むのは悪いことではないのだけれど、中小零細企業は銀行融資つまり資金繰りを意識して決算書を作る必要があるのに対して大企業は資金繰りを意識した決算書を作るよりもっと別の目的で作っていることが多い。だから、本や雑誌で決算書を学ぼうとしても中小零細企業の社長には役に立たないことが多い

 勉強熱心な社長に冷や水を浴びせるようなことを書いたけど、すごく重要なことなので意識してほしい。

 

 

 

資金繰りは大変!

 何で資金繰りが大変か? いくつか理由がある。

 まず言えるのは、資金繰りは社長の仕事なのに、誰も教えてくれないか、詳しい人がいない。税理士が詳しいかというとそんなことは全くない。税理士の本業は税務署への税務の申告だから、知っている必要はないし、そもそも税理士は知らない。万一知っていたとしても、予期せぬトラブルに巻き込まれたくないから、黙っている

 次に言えるのは、悪化して初めて見えてくる。悪化が見えたらすでに崖っぷち状態。そこで社長は慌てるわけで、残された時間が少ないから打つ手が限られてしまう。残り時間が少なすぎると、どれだけ優れたコンサルタントでも十分な手を施すことはできない。

 どれくらい時間が必要かというと、最低でも2週間は必要で、できれば3週間か4週間ほしい

 資金繰りをよくするためには、ステークホルダーと話し合ったり銀行に調整をお願いしたり資金計画書を書いたり、やるべきことがたくさんある。どうしても時間がかかるのだ。

 こんなことを社長は普通知らないから、ギリギリになってコンサルタントに駆け込む。いや、コンサルタントに駆け込む社長はまだいい。顧問税理士に駆け込む社長が多く、そこで時間のロスが生じる。解決できない人に相談するのは時間の無駄だし、資金ショートが迫っているのにそんな悠長なことをしている場合ではないのだ。

 しかし、資金ショートの経験が初めての社長は、誰に相談すればいいか、残り時間がどれくらいあるか、何をしなければならないか、全く知らない。知らないのはやむを得ないのだが、どんどん時間が過ぎていって、大変な事態になってしまう。

 社長は孤独で、自社の資金ショートの危険を他人に言いにくい。ましてや同業他社に漏れたら、それだけで取引が減ったり、よからぬウワサが流れて信用不信を招くのがオチ。

 社長になった人はまず最初に「資金繰り」について学ぶべきだし、信頼できるコンサルの助言を得ながら経営するのがベストだ。

 

源泉徴収税の納税も資金繰りの1つか?

 資金繰りの1つに源泉徴収税を挙げる税理士がいる。確かに半年に1回まとめて納税するものだから従業員数が多いと税額も多くなる。

 しかし、これはあらかじめ予定できる支出であり、金額もはっきり分かっているわけで、要はその源泉徴収税のお金を帳簿上でも預金通帳でもいいから分けておけば済む話に過ぎない。

 半年後の納税だからといって手をつけてしまうようでは、そもそも根本的な経営ができていないわけで、問題は経営の仕方にある。資金繰り以前の話だ。

 国に収める税金を滞納するのは絶対によくない。国は強制的に取りに来るからね。したがって、事前に納付額が分かっている源泉徴収税を滞納するなんてあり得ないことだし、手をつけてしまうような経営者は経営者失格ということだ。

メガバンクがだまされた決算書

 格安旅行会社てるみくらぶ社長が銀行融資2億円の詐取容疑で逮捕された。だまされたのはメガバンクの三井住友銀行。

 2014年9月期には債務超過になったにもかかわらず、融資を受けるために2013年9月期から架空利益を計上するなどして業績がいいように見せかけていたそうな。なかなかの策士だ。

 つまり、1年前に「このままいけば債務超過になる」と明確に予測していたわけで、そのために1年かけて決算書をごまかす(粉飾決算)の準備をしてきたわけだ。決算書は1年かけて作るものなので、それなりに準備期間が必要だ。

 架空利益を計上するためにどんなことをしたのか。実際の入金を増やすのは無理だから、売掛金を増やしたのだろう。売掛金を増やせば、とりあえず銀行には安心材料だ。

 しかし銀行が売掛先に問い合わせれば粉飾があっと言う間に発覚しただろうから、要するに銀行は問い合わせなかったのではないか。確認作業を怠ったという点では銀行がチョンボをしたことになる。担当者の責任は小さくない。

 この事件で銀行の査定は今後厳しくなる。なぜなら、粉飾を見抜けなかったのは銀行、特にメガバンクにとっては恥だから。

 原理原則に戻ると、経営者はこのような粉飾を絶対にしてはいけない。資金繰りが大変なら正攻法で改善するのが原理原則だ。